介護職は体力面だけでなく精神面でも大変な仕事だと感じている方も多いのではないでしょうか?
人を相手にする介護という仕事の中では、自分の思った通り、計画通りに仕事が進まないことも多く、人間同士のトラブルや、人手不足による残業や休日出勤の多さなどを理由に、精神面から体調不良を起こしてしまう介護職も少なくはありません。
そんな中で介護職が起こしやすいと言われているのが「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と「介護職うつ(うつ病)」。
介護職が抱えている悩みやストレス、そこから陥る「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と「介護職うつ(うつ病)」について調べてみました。
人手不足に人間関係…介護職が抱えるストレスとは
世界中で深刻化している高齢化問題。
内閣府が発表している令和元年版高齢社会白書によると、平成30年の高齢化率は28.1%で人口の4人に1人は65歳以上の高齢者となっています。
推計によると令和18年には高齢化率が33.3%に達し、3人に1人が高齢者になると予測されています。
増える高齢者に対し少子化はどんどん進み、現時点でも現役世代が2人当たり1人の高齢者を支える必要が。
ただでさえ介護対象者が増える一方、介護を担う現役世代の比率が下がっているにもかかわらず、その過酷な労働環境や低いと言われる賃金から介護職のなり手が増えないため、介護業界では慢性的な人手不足が続いています。
介護職は対人の仕事。人手不足だけでなくさまざまなストレス要因が叫ばれています。
具体的にそのストレス要因を見ていきましょう。
人手不足で残業・休日出勤は当たり前!?
介護労働安定センターが毎年行っている介護労働実態調査の最新版によると「労働条件等の悩み、不安、不満等」で挙げられている内容として「人手が足りない」「有給休暇が取りにくい」「休憩が取りにくい」「労働時間が長い」「不払い残業がある・多い」といったように人手不足が原因とみられる労働環境の悩みが多く見られます。
人手不足から業務量や労働時間が増えたり、ろくに休みが取れないようではストレスが溜まる一方で精神的にも滅入ってしまいます。
「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」という悩みを持つ方が多いように、体力的にも負担が大きい介護の仕事。
身体的負担が大きい仕事を残業のせいで長時間行わなければならなかったり、休みが少なく疲れを回復させる暇もないといった状況が続くことで精神的だけでなく体力的にも疲れ切ってしまうといった介護職員も少なくないようです。
職場での人間関係がややこしい!?
介護労働実態調査によると職場の人間関係を理由に離職する介護職員も多く、ストレスの大きな原因になっていると考えられます。
「職場での人間関係等の悩み、不安、不満等」というアンケートの結果では「部下の指導が難しい」「自分と合わない上司や同僚がいる」といったように、上司・部下・同僚といった人間関係の難しさが出ました。
介護職の場合は20代から60代以上と働く年齢層が幅広く、半数以上を女性が占めるといった職場環境。
子育てが落ち着いてから介護職デビューする人も多く、上司が自分の娘くらいといった状況も少なくはありません。
指示を出す上司の側からしても自分の親ほども年の離れた部下に指導するのは非常に難しく、頭を悩ませる原因に。
お互いに普段から意見を言いやすい人間関係を構築しておくことが必要になってきます。
また老人ホームやデイサービスなどは一度に多くの利用者を相手にする必要があるため、職員同士の連携は欠かせません。
連携が上手くいかないと、利用者の安全を守れなかったり、ちょっとした変化にも気づけない恐れが。
上司・部下だけでなく、同僚とも良好な関係を築けていないと介護の現場では仕事ができないのです。
介護職が陥りやすい精神障害とは…
ストレスを受けやすい職種のため、介護職が精神障害を起こしたケースも少なくはありません。
そんな中で多いと言われている精神障害が「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と「介護職うつ」です。
どちらもストレスが大きな原因と言われている精神障害ですが症状はそれぞれ違います。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
女性が発症しやすい「燃え尽き症候群(バーンアウト)」
ある調査では特別養護老人ホームで働く介護職員の中で、男性に比べて女性の方が「燃え尽き症候群」を発症した例が多かったという結果が出ています。
一生懸命仕事に取り組むがゆえに日々のストレスで心がすり減ってしまい、突然火が消えたようにやる気が枯渇してしまうといった症状です。
もともと対人サービス業と言われる医療・看護・福祉・教育分野に多いと言われている精神障害でしたが、最近ではサービス業、営業職、介護ヘルパーなど人と関わる職業全般に渡って増えてきています。
「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の主な原因
燃え尽き症候群も精神障害の原因はもちろんストレスです。
ですがそのストレスとなる内容が特殊なため、対人サービス業の従事者に発症しやすいと言われています。
特に多いのが仕事とプライベートの境界線があいまいなこと。
「休日でもいつ呼び出されるか分からない」「家に持ち帰って仕事のことを考える必要がある」
など、プライベートでも十分に休まることができず、常に緊張状態を保ち続けているといった方は燃え尽き症候群に陥りやすい傾向にあります。
「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の主な症状
- 身体的症状…吐き気・不眠・食欲不振・胃腸障害など
- 仕事への意欲減少
- 他人への無関心
- 朝起きられない
- 無気力・無感動
- 怒りっぽくなる
再発率の高い「介護職うつ(うつ病)」
うつ病は男女問わず誰にでも発祥しうる精神障害です。
仕事に対する責任感が強い人ほど発症しやすいと言われ、介護職に限らず様々な職業でうつ病を発症する人が増えています。
うつ病で気を付けたいのは高い再発率と伝染力。
一度うつ病を発症すると、発症を繰り返すごとにその再発率は上がっていると言われています。
精神障害が伝染!?と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、うつ病は間違いなく伝染します。
一緒に働く同僚はもちろん、長い時間を共に過ごす家族は特にうつ病が伝染しやすいと考えられています。
うつ病の旦那さんを支援していたら奥さんも一緒にうつ病になっていたというのはよくある話。
優しい言葉をかけても、何かを手伝ってあげても拒否・否定され、挙句の果てには「どうせ生きていてもしょうがない」「死にたい」しか言わなくなった家族が横にずっといるのですから、ストレスが溜まってうつ病になってしまっても無理はありません。
「介護職うつ(うつ病)」の主な原因
うつ病は責任感の強い人ほどなりやすいと言われています。
自分がちょっと疲れたな、体調がおかしいなと思う時でも休むことができず、精一杯仕事に取り組む中で思った通りの仕事ができず、体調をさらに崩したり精神的に疲れてしまったりということがあるようです。
一番は無理をしないこと。
人のために働く介護の仕事ではあるのですが、自分を大事にしてあげる時間も必要。
人手不足だから自分が頑張らなくては!と気負いすぎるのはよくありません。
「介護職うつ(うつ病)」の主な症状
- 身体的症状…食欲不振・不眠・味覚障害など
- 無気力
- 絶望・不安感
- 自暴自棄・自殺願望
介護職が精神障害を起こさないために必要なこと
介護職が精神障害を起こさないためにはその原因を取り除くことが一番です。
どちらも人手不足などが原因で仕事のことを考えなければならない時間が増え、上手く休息を取れなくなってしまうことが大きな原因になっています。
人手不足を解消することはなかな難しいかもしれませんが、自分の体や心を第一優先にしっかりと休養を取ることも大事。
精神障害で現場に立てなくなってしまっては元も子もありません。
自らが人手不足の原因になってしまわないためにも、仕事とプライベートの切り替えとしっかりとした休養を取るようにしましょう。