介護職の転職サイトを見てみると「未経験・無資格OK!」といった求人を見かけることもあると思います。
実際のところ未経験はOKでも、無資格の場合は介護職のメインである食事・更衣・入浴といった身体介助が行えず、資格を取得するまでは家事や買い出しといった生活のお手伝い程度の仕事しかできません。
未経験の方でも転職前に取得しておくことで職場の選択肢も増えますし、介護士としてキャリアがある方も資格取得を目指すことでさらに良い条件の職場に転職できたり、収入アップにつながります。
どんな資格を取れば転職が有利になるのか見ていきましょう!
介護職の必須資格「介護職員初任者研修」
介護業界は慢性的な人手不足が続いており、一人でも多くの人員を確保するために未経験や無資格でも受け入れて、働きながら資格取得を目指してもらおうという事業所が数多くあります。
その場合、資格取得までは料理・掃除・洗濯・買い出しなど利用者に直接触れない家事援助しか行えません。
ですが、資格の中には介護業界で働いたことがなくても養成校で講座修了すれば取得できるものもあります。
それが介護の入門資格と言われる「介護職員初任者研修」です。
どういった資格なの?
介護職員初任者研修は介護職を目指す人が最初に取る資格です。
介護職の土台となる知識・技術を修得することを目的としており、食事、更衣、入浴介助など、介護職の専門的な知識と技術を習得するための資格です。
そもそもこの資格がないと身体介助が行えませんので、身体介助業務がメインとなる訪問介護などは資格取得が必須となります。
デイサービスや老人ホームなどで働く介護職の中には介護職員初任者研修を取得していない職員もいますが、その場合はレクリエーションや資格保持者のサポートといった業務しか行えません。
資格の取得方法や研修内容は?
介護職員初任者研修を修了するためには、国が定めた内容に沿ってテキストを作成し初任者研修を行っている企業や団体に受講の申し込みをする必要があります。
研修としては実技講習(90時間程度)と座学講習(40時間程度)があり、研修を終えることで修了証明書が交付されます。
研修内容は「職務の理解」「介護における尊厳の保持・自立支援」「介護の基本」「介護・福祉サービスの理解と医療との連携」「介護におけるコミュニケーション技術」「老化の理解」「認知症の理解」「障害の理解」「こころとからだのしくみと生活支援技術」「振り返り」といった介護の基本。
研修科目終了後に評価テストがありますが、研修をまじめに受けていれば難しいことはありません。
資格の取得にかかる期間や費用は?
資格取得にかかる期間は平均で3~4ヶ月と言われています。
研修先によっては2週間~1か月程度で修了できるコースを用意しているところもあり、自分のスケジュールに無理のない期間で取得できる場所を選ぶのがオススメです。
早く取得したいからといって最短のスケジュールを組んだものの、体調不良などの突然のスケジュール変更に対応してもらえないようでは研修修了まで続けられません。
取得するための費用は研修先や都道府県によって違い、2~12万円程度と大きな差があります。
受講料が高額な場合は、一般教育訓練給付金制度が活用できることも。
また、先に転職先を決めている場合は、費用を転職先の企業が一部負担してくれたり、介護職の職業紹介や人材派遣を行っている会社が、自社紹介の企業に就職することを条件に受講料を安くしてくれることもあります。
未経験でもキャリアアップ!?「介護福祉士実務者研修」
未経験・無資格でも取得できる資格としてもう一つ「介護福祉士実務者研修」というのがあります。
「介護職員初任者研修」に加え、「介護過程」や「医療的ケア」など、もう一歩踏み込んだ知識を勉強していきます。
さらにキャリアアップして「介護福祉士国家試験」を受けたい!と考えている方には取得が必須となっている資格です。
すでに持っている資格によって研修の受講時間が異なりますが、極端なことを言えば無資格でも受講できるため、「介護職員初任者研修」を省略していきなり「介護福祉士実務者研修」からスタートするということも可能です。
どういった資格なの?
「介護福祉士実務者研修」は「介護職員初任者研修」に比べてさらに専門性の高い資格となっています。
介護の基本に加え「介護過程」「医療的ケア」といった研修が行われます。
介護の現場で実際に起きた事例を基にアセスメントを行い、計画の立案、実施、評価までの流れを行う「介護過程」はより実践に近い研修となります。
また、今までは看護師といった医療従事者しか行えなかった喀痰吸引や栄養経管といった「医療的ケア」も学べますので、さらなるスキルアップが可能です。
さらに「介護福祉士実務者研修」を修了することでケアプランに沿った訪問介護計画書を作成し、ヘルパーとの連絡や調整を行う訪問介護事業所のサービス提供責任者になることができます。
管理する立場になるため、通常の介護職に比べると給与面も高い傾向があります。
資格の取得方法や研修内容は?
「介護福祉士実務者研修」も「介護職員初任者研修」と同様、国が定めた内容に沿ってテキストを作成し実務者研修を行っている企業や団体に受講の申し込みをする必要があります。
研修内容はすでに取得している資格によって異なりますが、無資格の場合は「人間の尊厳と自立」「社会の理解Ⅰ・Ⅱ」「介護の基本Ⅰ・Ⅱ」「コミュニケーション技術」「生活支援技術Ⅰ・Ⅱ」「発達と老化の理解Ⅰ・Ⅱ」「認知症の理解Ⅰ・Ⅱ」「障害の理解Ⅰ・Ⅱ」「こころとからだのしくみⅠ・Ⅱ」「介護過程Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」「医療的ケア」といった20項目、450時間を受講する必要があります。
受講後の評価テストといった試験の実施義務はなく、講座修了時に修了証明書が交付されます。
【所持資格別】介護福祉士実務者研修の免除時間
- 介護職員基礎研修(免除400時間)
医療的ケア(50時間)のみ受講 - ホームヘルパー1級(免除355時間)
介護過程Ⅲ(45時間)・医療的ケア(50時間)を受講 - ホームヘルパー2級・介護職員初任者研修(免除130時間)
ホームヘルパー2級と介護職員初任者研修の免除時間が同じだが、免除される内容はそれぞれ異なる。 - ホームヘルパー3級(免除30時間)
資格の取得にかかる期間や費用は?
すでに持っている資格によっては受講項目の免除が行われるため、それぞれの期間は異なりますが、だいたい4~6か月ほどかかります。
初任者研修を修了しているだけでも130時間免除されますので、ステップを踏んで受けるのもオススメです。
また、介護過程Ⅲ・医療的ケア以外は通信での受講がOKとされています。
初任者研修は130時間ある講座の中で40.5時間しか通信での受講が認められていないのに対し、実務者研修は450時間のうち350時間以上を通信で受講できます。
ほとんどの講座を自宅などで受けることができるので、働きながら資格取得を目指す方は初任者研修を受けずに実務者研修から受講する方が修了しやすいかもしれません。
費用は初任者研修と同様、研修先や都道府県によっても違いますが、無資格で10~15万円ほどとなっています。
一定の条件を満たし、教育訓練給付制度の『専門実践教育訓練給付金』が利用できると、ハローワークから受講費用の最大70%が受給できます。
受講前にハローワークに確認することをオススメします。