特養老人ホームや介護老人保健施設など、看護師が常駐している介護施設は数多くあります。
そんな中でよく耳にするのが介護士と看護師の対立。
お互いに利用者を思うからこその認識のズレやできることの違いなどが原因だと言われています。
接する機会も多く、協力が不可欠な関係ですので、できれば対立は避けたいところ。
今回は介護士と看護師が対立する原因と改善するためのポイントをご紹介します。
介護士VS看護師!対立してしまう原因とは?
肩書は違えど同じ現場で利用者のために働く仲間同士。
利用者が快適に過ごせるようにというお互いの目的は同じはず。
それなのにどうして対立してしまうのか…。
まずはその原因を探っていきましょう。
一部の看護師による間違った立場認識
介護士の手が回らなかったので、看護師に手伝ってほしいと伝えたところ、
「私は看護師だから介護士の仕事なんか手伝えない!」と言われました。
同じ現場で働く仲間なのに…。
一部の看護師に見られるのが「看護師>介護士」といった立場の誤認識。
看護師は介護士にはできない医療行為を行えることから、看護師の方が介護士よりも立場が上だと間違った認識をしている看護師がいます。
その逆で、看護師に対して劣等感を抱く介護士も。
また、収入面の差も間違った立場認識をしてしまう原因の一つかもしれません。
厚生労働省が毎年発表している賃金構造基本統計調査を見てみると、看護師の平均年収は介護職より150~170万円ほど上回っています。
そこからお互いに「看護師>介護士」といった認識をしてしまう可能性も高いのです。
看護師と介護士はそもそも職種が違う上に、それぞれの専門領域も違います。
ですからどちらが上といった優劣はありません。
間違った立場認識から介護士に対して高圧的な態度を取る看護師がいるようで、そこから対立関係が生まれてしまっています。
それぞれの重視ポイントの違い
微熱とはいえ発熱したショートの利用者をそのまま置いておくなんて病院では考えられません!
介護士は家族の負担軽減のために様子を見るとか言ってますけど、もし他の利用者に感染するような病気だったらどうするつもりですか!
介護施設で働く看護師の多くは新卒ではなく、医療機関で勤務した経験のある中途採用者。
そのため、医療機関での知識や認識をそのまま持ち込んでしまうことが多いのです。
それは決して悪いことではなく、真剣に仕事に取り組んでいるからこそ。
医療的な考えを重視し「病院ならこうする」「体調が悪いならすぐ家族の元へ」といった看護師と、利用者やその家族の生活を重視し「少々の体調不良ならご家族の負担軽減のために様子を見よう」という介護士とでは、それぞれの重視するポイントに差ができてしまい対立する原因になってしまうことも少なくはありません。
看護師は目の前にいる利用者の健康が第一優先、介護士は利用者の家族のことなど利用者だけでなく周りの生活面も含めて考えます。
どちらも利用者のことを思うがゆえに起きる考え方の相違。
お互いに間違っていないからこそ譲れない思いから対立してしまうようです。
「介護士と看護師」どうすれば関係改善できる?
介護士と看護師は同じ職場で働くそれぞれのプロフェッショナル。
力を合わせれば利用者により良いサービスを届けられるに違いありません。
うまく関係を築けている職場は良いのですが、すでに対立してしまっている場合、どうすれば改善できるのでしょう。
お互いの認識のズレを少しずつすり合わせていくための改善策をまとめてみました。
お互いの専門分野を尊重する
看護師も介護士もそれぞれが医療と介護のプロフェッショナルだということを認識して、お互いに尊重することが大事。
介護士側としては、医療の知識が必要な時は看護師の意見をうまく取り入れ、尊重してあげること。
看護師は医療のプロフェッショナルです。
介護士が普段正しいと思っている医療知識は間違っているかもしれません。
それが正しいかどうかを看護師に確認するだけでも違います。
介護士は看護師よりも利用者に近く、常にその状況を間近で観察できる立場にいます。
だからこそ、利用者のちょっとした体調の変化に気付きやすく、利用者の性格や日常生活に合わせた対応ができるのです。
それが看護師にはできない介護士の強み。
介護士はそういった利用者の細やかな状況を看護師に伝えることで、より的確な医療ケアを行うことができます。
普段から看護師とコミュニケーションを取り、介護に必要な最低限の医療知識などを教えてもらうことで、看護師がいない時間帯の適切な対処や看護師への申し送りなどもスムーズに行えます。
日頃から医療に関することについて気軽に聞ける関係を築くことが大切です。
最初から諦めてしまわずに意見や要望を伝える
「言ったところでどうせ聞いてもらえないから…」
と、そもそも意見や要望を伝えるのを諦めてしまっていませんか?
もっと利用者が気持ちよく利用してもらうためにこうしたい!こうして欲しい!という意見や要望は臆せず伝えてみましょう。
利用者のことを思う気持ちは看護師も同じ。
普段の生活状況を良く知る介護士の意見を聞きたいと思っている看護師は多いはずです。
看護師に意見や要望を伝える際に押さえておきたいポイントがあります。
看護師は医療ケアのプロフェッショナル。
意見を伝える時は「私が思うに〇〇に違いないんですが」といった根拠もなく主観的に言うのではなく、具体的な状況や今までの経験などを示して伝えることが必要です。
また、要望する際も「私にはできないのでお任せしてもいいですか?」といった全て丸投げの要望ではなく「介護士のできる範囲でこれだけやってきたのですが、ここからは看護師さんにお任せしてもいいですか?」といったように、介護士のできる範囲で努力してきたこと、後は看護師の専門分野なのでお任せしたいといったことを伝えるようにしましょう。
お互いの利用者への思いをすり合わせてみよう
介護士も看護師も利用者に対する思いは同じはず。
ですが対立するうちに、利用者中心だったはずの思いが自分たちの立場中心になってしまっていませんか?
利用者がより良い生活を送るために介護士ができること、看護師ができること、それぞれ立場が違うからこそできることも違いますし、違う立場から見ることで「もっとこうしてあげれば」「もっとここを協力できれば」といった意見も出てきます。
利用者が何を必要としているかを第一優先に考えながら、お互いの思いをすり合わせていくことで自然に協力できるようになるはずです。
介護士と看護師で協力すれば最強のタッグに
介護のプロと看護のプロ、お互いが協力すれば利用者にとってこれ以上心強い者はいない最強のタッグになります。
どちらが上か下かなんてことを考えているうちは、協力なんてできません。
看護師が介護士に対して優越感を持たないこと、介護士が看護師に対して劣等感を持たないこと。
お互いが同じ目線で利用者のことを第一優先に考えることで、自然に対立は無くなります。
それぞれの立場や仕事を理解しながら意見を言い合うのは悪いことではありません。
ですが、お互いに利用者のことを第一に考えるがあまり、意見が対立するなんてことも…。
そんな時は対立するばかりではなく、お互いの立場を尊重しながら自分たちが何をすべきか一緒に考えてみてはいかがでしょうか。